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ガスパロ物語

ガスパロは、
「ありがとう」のない国の
「おめでとう」を言わない国王が統治する
「愛してる」とはとても言い辛い渓谷を見下ろす
小さな赤茶色の煉瓦積みの家に
4人のファミグリアとビブッていました。

ガスパロ物語|ファミリーイタリアン ガスパロ 〜幸せを運ぶヨウム店〜

ガスパロのファミグリアモグリーは、
「ありがとう」を常食とし
「おめでとう」と言うのが大好きな
「愛してる」の飛び交う生まれでしたので
ガスパロにとってそれが
「ナチュラーレ」
とは到底思えなかったのです。

ですからガスパロとモグリーは
センプレ喧嘩しました。

ファミグリアバンビーニはそれを悲しみました。
悲しみは沢山の涙を作り
作られた涙は地を這って流れ出し
大地の波間を縫って
選りすぐりのウサギになりました。

選りすぐりのウサギは絶え間なく悲しみに暮れて輝き
月の光を浴びると
世にも美しい音楽を奏でました。

これをファミグリアバンビーニは
肩を寄せ合い聴き入りました。

ガスパロ物語|ファミリーイタリアン ガスパロ 〜幸せを運ぶヨウム店〜

奏でる音が渦を巻き
世界中の人の悲しみを
巻き取り
たぐり寄せ
また
この渦の一部にし
どんどん膨らんで大きくなり
大きく巨大になった渦は
世界の全ての悲しみを奪い去ってしまったのでした。

奪われた悲しみの一群は
その巨大な力に溺れて
二度と小さな箱へ帰る事を
望みませんでした。

悲しみの渦は
自ら棘山となり
そこがたいそう気に入って
住人となりました。

ガスパロ物語|ファミリーイタリアン ガスパロ 〜幸せを運ぶヨウム店〜

さて、
悲しみを奪われたガスパロとモグリーは
なぜ喧嘩をしているのかを
忘れました。

ガスパロは
ファミグリアモグリーと
ファミグリアバンビーニのために
最高の「何か」をしたい!
と思いましたが
ガスパロは
「ありがとう」も
「おめでとう」も
「愛してる」も知らない生まれの男でした。

そこでガスパロは
旅に出ました。
世界中の「最高の何か」を探して歩き続けました。

「この世界は
沢山の「最高の何か」で溢れているけれど
僕はその「最高の何か」
を手に入れる術を知らない。」

困り果てるガスパロを見ていた
悲しみのない国の
そこはかとなく佇むのが大好きなヨウムが
ガスパロの目の前にある
節くれ立つ事のないマルーンの樹の
マルーンの枝に停まって言いました。

「この袋は
一番最初に入れた物と
それから幾つかの仲間の集合体と
その近似値を
沢山集めようとする
メラグリオーソにバツグンなズタ袋さ。

世界中の最高と
その近似値をこのバツグンに入れ集めたら
君はそいつを被ればいい。
君が最高になるよ。」

ガスパロ物語|ファミリーイタリアン ガスパロ 〜幸せを運ぶヨウム店〜

そうしてガスパロは
世界中の人々が最も光り輝く瞬間に
発する言葉を
無数にバツグンに入れ被りました。

ズタ袋に目の穴を2つ開けると
そこから沢山の最高が溢れ出しました。

これは大きな大きな激流となり
激流は大地の砂を巻き上げて
リズミカルに動き出すと
音をうみました。
砂のかけらがうんだ音はやがて
幸せな音楽になりました。
その音楽に
世界中の人が
「ありがとう」を歌いだし
「おめでとう」と隣人の幸福を我が事の様に喜び
本当に愛するその大切な命に
コンティエン「愛してる」と
ロッタジオン踊りだしました。

大地を駆け巡る音とその喜びは
その悟りを拓いたヨウムの背中に降り注いで
風を作りました。

喜びの風に煽られたヨウムは天高く舞い
遠く離れた
「ありがとう」のない国の
「おめでとう」を言わない国王の元へと
飛んでいきました。

「ありがとう」のない国の
「おめでとう」を言わない国王は
その日を境に全国民を祝い
「あなたがあなたであると定めた日と
あなたが生きる全ての日を喜びとする祝日」
の政令を出しました。

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「ありがとう」のない国の
「おめでとう」を言わない国王が統治する
「愛してる」とはとても言い辛い渓谷を見下ろす
小さな赤茶色の煉瓦積みの家に
ガスパロを待つ3人のファミグリアが
静かにこの政令を聞きました。

しかし、
ファミグリアモグリーとファミグリアバンビーニは
少しも笑いませんでした。

「ありがとう」を常食とする
「おめでとう」を言うのが大好きなモグリーは
全国民の全祝日の喜びを分かつ事なく
奪われた悲しみを紡いで手繰り寄せ
深く深く、
悲しみに暮れるのでした。

そこへ、
ズタ袋を被ったガスパロが
モグリーとバンビーニの元へ帰って来て言いました。

「君たち、ここにいれくれてありがとう。
僕の不在をそこまで悲しんでくれたのだね。

国王の作ったこの素晴らしい祝日を祝おう。
あなたがあなたであることと
あなたとかわいい僕の分身が生きるこの全ての日よ、
おめでとう。

君たちがいるこの世界を愛しているよ。
君たちを心から愛している。」

こう言って
ガスパロは、
世界中を旅した中で最も長く愛した生パスタと
この上なく気に入ってつい何度も食べてしまった
丸くて香ばしいモチモチのピッツァと
それに
ファミグリアの喜ぶ顔が楽しみな
洒落の効いたドルチェを土産に
モグリーとバンビーニを抱きしめました。

生パスタとピッツァと、
洒落の効いたドルチェは
かけがえのない味でした。
この味をモグリーとバンビーニは何よりも愛しました。

ガスパロは言いました。
愛する人と食べればなんでも美味しいのだけど
最高の何かをプラスしたこれって
かけがえのないそれってことさ。
僕のこれは世界に唯一無二のこれだ。

ガスパロ物語|ファミリーイタリアン ガスパロ 〜幸せを運ぶヨウム店〜

ガスパロは
幸せな国の
愛の溢れる国王の居る
世界中を見渡す気高い丘の上の
赤茶色の煉瓦積みの家にビブッている
世界一幸福な男となりました。

おしまい

ガスパロ物語|ファミリーイタリアン ガスパロ 〜幸せを運ぶヨウム店〜